マニエリスムとは、16世紀中ごろから末にかけて見られる後期イタリア・ルネサンスの美術様式のことです。イタリア語で「手法」「様式」を意味する「maniera(マニエラ)」という言葉が由来とされています。主に宗教改革やローマ略奪といった、当時の不安定さを反映しているのが特徴です。

マニエリスムの画家たちは、不安感や盛期ルネサンスの調和の意図的な破壊を表現することに注力していました。ほかにも、宮廷や知識層といった一部の人物が楽しむ、芸術的洗練や奇想が印象的な作品も生み出されています。

ミケランジェロやラファエロの「手法」を評価するため、のちにミケランジェロの弟子であるヴァザーリによって、マニエリスムには「自然をも凌駕する高度な芸術的手法」という意味も加えられました。

しかし17世紀のバロックの時代に入ると、盛期ルネサンス終盤から16世紀末までの芸術家への評価は「盛期ルネサンスの画家たち、とくにミケランジェロの模倣をする者」とみなされるようになり、マニエリスムの画家や作品も一時は否定的な目で見られていました。マニエリスムが再評価されたのは、20世紀になってから。盛期ルネサンス以降の芸術的な動向を示すものとして、マニエリスムが注目されるようになりました。

マニエリスムの代表的な作品として挙げられるのが、アーニョロ・ブロンズィーノの『愛のアレゴリー』や、パルミジャニーノの『長い首の聖母』など。また姓名が不明な画家が多いフォンテーヌブロー派の人物が描いた『ガブリエル・デストレとその妹』も、マニエリスムの作品として知られています。